2020年11月10日
パチンコ店の9月の売上は前年比2割程度の減少が続く
経済産業省の特定サービス産業動態調査によると、2020年9月のパチンコ店売上高(全数調査ではない)は213,475百万円で前年同月に比べ22.4%減少と前月(-21.7%)とほぼ同じ水準で推移しました。
5月を底に減少幅は縮小してきましたが、ここへ来て回復が足踏みしています。
昨年7月から15か月連続で前年割れが続いていることになります(下のグラフをご参照ください)。
主要パチスロ機の撤去による減収懸念とパチンコヒット機種による客足下支え
10月以降も、売上が大きく回復しているとの情報はほとんど目につかず客足の戻りは頭打ちといった印象です。
これまで稼働をけん引してきた主要機種のひとつである旧基準機「ミリオンゴッド神々の凱旋」が11月に設置期限を迎えており、パチスロの客離れが懸念されています。
お店が利益の取れる機種として設置台数が多いため影響は甚大だと捉える向きが多く、撤去後にお客がどこへ流れるのかに関心が向けられています。それは、他のパチスロ機なのかそれともパチンコなのか、はたまたそのままパチンコ・パチスロを止めてしまうのかといったことです。
一方、パチンコでは、遊タイム搭載機種の導入が目立っています。導入は毎月あり、11月に至っては3機種もリリースされます。
しかしながら、運用面はお店によりまちまちのようです。
SNSへの投稿内容から判断すると、良調整で集客を図っているとみられるお店もあれば、スペックが甘すぎて利益が取りづらい機種が多いからか、かつてないほどの低い回転率での運用を余儀なくされている向きもあります。
この他、非遊タイム機種である大工の源さんやシンフォギア2など一部ヒット機種の稼働は比較的高いようです。
こうしたことから、パチンコ全体としては、客足の減少はなんとか歯止めがかかりつつあるものの、大きく伸びるほどではない、といった感じでしょうか。
ちなみに、私の近隣の大型店舗は遊タイム機がパチンコ全台に占める割合は、今のところ1割に満たない程度です。まあ、今後、どこまで増えるかわかりませんが。
消費マインドが一段と冷え込むなかでのパチンコ支出の減少
こうしたなか、懸念されるのは、売上の前年割れが15か月続いていることです。
これに、以前からの広告宣伝規制や射幸性を抑えた遊技機への転換(一定期間先延ばしされてはいるが)による影響も加わります。
パチンコ離れに歯止めがかからない環境に変わりはありません。
パチンコへの支出を考えるにあたって、家計消費支出(前年同月比)をみると、消費税増税の影響もあり2019年10月以降、前年を下回る傾向にあります。
9月は-10.2%と、前月(-6.9%)より減少幅を拡大しています。
財布のひもは一段と固く締められつつあります。
このように、消費マインドが低下傾向にあるということは、当然、パチンコへの支出の減少にもつながります。
一方、世帯収入(前年同月比)は、特別定額給付金の支給が行われた効果もあり、5月(前年比9.8%増)、6月(15.7%増)、7月(9.2%増)と大幅な増加が続いてきましたが、8月(1.2%増)、9月(2.6%増)は増加幅がその頃より縮小しています。
解雇が増えるなかでのパチンコ支出への影響は続く
この間、有効求人倍率は2019年5月以降、低下傾向にあり、企業の雇用意欲は明らかに減退していると言えるでしょう(2019年4月1.63→5月1.62→2020年→6月1.11→9月1.03)。
さらに、足元では雇用の喪失が進行しています。
厚生労働省によると、コロナ禍による全国の解雇や雇い止めは、2月から11月6日までに7万242人(見込み含む)にものぼるそうです。
6月に2万人を超え、以降は1か月1万人のペースで増加しているとのことです。
このように、今後の所得環境の悪化が予想される中、家計の消費支出は、特別定額給付金の支給による一時的な下支え効果も終わり、抑制傾向が続くと思われます。
パチンコ遊技客の原資である所得をとりまく環境の悪化といった大きな要因が背景にあることから売上の回復はそう簡単ではなさそうです。