2020年5月20日
本記事の要旨
●パチンコ店の2020年3月の売上は前年比2割の大幅減少で、2019年7月以降9か月連続の前年割れとなった。
●これは、射幸性を抑えるための広告宣伝規制や遊技機規制が続く中で、新型コロナウイルス対策としての自粛ムードの蔓延による客足の減少に加え、パチンコユーザーの先行き不透明な所得環境を背景とした消費意欲の減退によるものと捉える事もできる。
●パチンコ店の客足は伸び悩みが予想される中、利益確保のために回収がきつくなる傾向が過去の事例としてある。
●こうした厳しい環境下でのパチンコ店の集客手段は、出玉還元が効率的であり即効性があると思われ、店舗によっては活用が期待できる。
●立ち回りを重視するパチンコユーザーは、以上のような事柄を踏まえて店舗選びや台選びを行い、遊技をより楽しみたい向きは支出額のバランスを考えながら適度な遊技に留める姿勢がいつも以上に重要になると思われる。
パチンコ店の3月の売上は前年比2割の大幅減少
特定サービス産業動態調査によると、2020年3月のパチンコ店売上高(全数調査ではない)は241,899百万円と前年同月比-19.6%の大幅な減少となりました。9か月連続の前年割れです(下のグラフ参照)。
これは、家計消費支出(二人以上の世帯、前年同月比)が2019年10月以降、前年を下回り続けている事と相関関係が見て取れます。
7月から消費マインドが弱含んでいたのではないかとの見方も否定できないし、2020年入り後は新型コロナウイルス対策としての自粛ムードの蔓延により、高齢者層を中心に客足が遠のいた影響も大きいでしょう。
ちなみに、9月の家計消費支出の突出は翌月からの消費税増税に先駆けた駆け込み需要による影響と思われます。
なお、以前からの広告宣伝規制や射幸性を抑えた遊技機への転換による影響が続いている中での話です。
普通に考えて給料が減ったら支出を抑えるのでパチンコへの支出も限定的です
世帯収入(前年同月比)は、ここ1年ほどの間に大幅な減少はないものの、家計消費支出(前年同月比)は2019年10月以降、前年を下回る傾向にあります。
加えて、足元の4、5月は政府のコロナ対策による事業所の全国的休業により、世帯収入および消費支出の大幅な前年割れが避けられない状況にあります(下のグラフ参照)。
この間、有効求人倍率は2019年5月以降、低下傾向にあり、企業の雇用意欲に先行き不透明感が漂っています(2019年4月1.63→5月1.62→10月1.58→2020年3月1.39)。
こうした所得環境下では、家計の消費支出は抑制的な推移が予想され、パチンコへの支出も限られてくるでしょう。
こうした状況を勘案すると、パチンコ店の売上は4、5月は前年割れが続き、6月以降は所得環境の展開に左右されると思われます。
これまでの実績から判断して客足が減り続けると回収がきつくなります
売上が伸びない中で店舗経営を維持するためには経費を圧縮するのが普通の手段です。
パチンコ店では客が払う貸玉料から、大当たりでいくらかを還元します。
店により84%から77%といった数値になるといった情報があります。店にとってはこれが最大の費用とも言えます。
貸玉料はいわゆる市場規模に相当します。パチンコ店の市場規模は約20兆円にものぼります。扱う金額が大きいので、この比率を動かすことにより利益は大きく変わります。
ただし、あまり利益を取りすぎると客のほうが飛び本末転倒ですが、やらかしてしまったのではないかという実例は過去にあります。
以下のグラフを見てください。パチスロ4号機で射幸性の高い機種が人気を博すなどにより、特に2003年以降は、遊技人口は減少し始めたのに市場規模は2005年に35兆円近くにまで膨らみました。この間、顧客負担は増加したわけです。
その後、景気は低迷し遊技規制も厳しくなったこともあり、市場規模、遊技人口ともに減少の一途をたどっています。
このように、還元率を下げ、顧客一人当たりの負担額を増やせば利益を稼ぐことができますので、集客が伸び悩む状況においての回収はきつくなることが予想されます。
パチンコ店の集客手段を考えてみる
集客手段としての広告宣伝については、厳しい規制があり派手な事はできません。
分煙化対応を含めた遊技しやすい店内環境の充実と丁寧な接客は当然です。
これらを除くと、主な集客手段は以下のような候補が考えられます。
●新台入替
●出玉還元
●コロナ対策
●地域への社会的貢献
このうち、コロナ対策は、どこの店もかなりの労力や費用をかけて鋭意実践中です。ただ、これも客側からみれば、やって当たり前の事なので、他店との差別化は図りづらいと思われます。
地域への社会的貢献は、行政や施設へマスクを寄贈したり、駐車場のスペースを飲食の移動販売業者へ提供したりといったケースがみられます。
これらも、長い目でみれば客のパチンコ店に対する印象は良くなるかもしれませんが、すぐに集客に結び付くかどうかは未知数です。
新台入替は費用がかかるので抑制されると考えるのが普通
ネットでの意見を見ても、最も大きい費用のうちのひとつである新台入替の台数は、かなり減るとの見方が大方です。また、コロナ禍による生産の遅れも影響があると思われます。
もちろん、パチンコのシンフォギア2や遊タイム機種といった話題性のある新台は稼働していますが限られます。
総じて、今までのような集客効果を期待するのは難しいでしょう。
出玉還元は全体としては抑制されるも店舗によっては活用されるか
こうなると、消去法的な考えになりますが、パチンコ店は出玉還元を駆使して集客せざるを得ないのではないかと思います。もちろん、還元費用はかかりますが新台入替ほどではないでしょう。
幸いなことに、2021年1月末までとしていた旧基準機の設置有効期限が1年延長される運びとなります。稼働の見込める人気機種の撤去期限が伸びることにより、お店にとっての出玉還元による集客効果は、今までと遜色ないものが期待できるのではないでしょうか。
ただ、お店の費用はいつもより限られているわけですから、還元の頻度や配分は抑制傾向にあると思います。
立ち回りを重視するパチンコユーザーは、以上のような事柄を踏まえて店舗選びや台選びを行い、遊技をより楽しみたい向きは支出額のバランスを考えながら適度な遊技に留める姿勢がいつも以上に重要になると思われます。