2020511日 

本記事の要旨

●全国のパチンコ店が休業に追い込まれた緊急事態宣言は、近々解除に向けての動きがみられるが、休業期間が長い13都道府県での経済的影響は特に大きい。

 

●今回の突発的休業によるパチンコ店の粗利の損失は、13都道府県では1か月分以上に相当する。パチンコの市場規模が縮小傾向にあるなか、突然の収入途絶で早い時期にキャッシュフローが回らなくなることは想像に難くない。

 

●今後は安定感のある持続的な収益性を目指したパチンコ店の増加と、パチンコが万人から愛される娯楽へとさらに発展することが望まれる。

 

休業期間は地域によりまちまち

202047日から発せられた新型コロナウイルス感染症対策としての政府による緊急事態宣言を端として、全国のパチンコ店は徐々に休業を余儀なくされました。緊急事態宣言の当初の解除予定であった56日には90%台後半の休業率となりました。

 

結局、緊急事態宣言は531日まで延長されましたが、政府は途中解除にも言及しているため、私は実質的な運用の目途は514日と踏んでいますし、世間ではそのような見方が多いようです。

 

さて、パチンコ店の休業開始時期は地域や店舗によって違います。主に各都道府県による休業要請が出された時から休業に入ったようです。

 

休業地域の分類について、休業期間別に大きく3つのグループに分けました。

(1)政府の緊急事態宣言が初めて発令されたのに伴い各都府県が次々と休業要請を出した地域。

7都府県~東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡。

47日から休業。

 

(2)緊急事態宣言が全国へ拡大され、重点地域として新たに特定警戒都道府県に追加された地域。

6道府県~北海道、愛知、京都、茨城、岐阜、石川

416日から休業。

 

(3)特定警戒都道府県以外の地域。34県。

425日から休業。

 

さらに、(3)については休業要請解除が見込まれる日に応じて3つに分類してあります。

 

なお、47日から514日までの全国パチンコ店休業による粗利損失額は2,950億円余りになると推計されました。

 

推計結果について興味のあられる方は文末に当該記事のURLを掲載しましたのでご覧いただければ幸いです。

 

最もダメージが大きいのは特定警戒都道府県に指定された13都道府県

前項のように分類した結果、最も経済的影響が大きいのは休業期間の長い(1)(2)13都道府県となります。(1)38日間、(2)29日間です。他の県は12日から20日になります。

以下の表はパチンコ店の粗利損失額を地域別、休業期間別に整理したものです。

 

 パチンコ店休業による経済的影響の地域差

表をみると、本来得られたであろう月間粗利に対する粗利損失額の割合が最も高いのは(1)7都府県で115%、次に高いのは(2)6道府県で100%です。

 

各々、月間粗利を超えるか、それに匹敵する損失が発生していることになります。

 

さらに、経済的影響を細かく考えてみました。

 

●営業拠点別~上記13都道府県に店舗が集中しているパチンコ店は、大きな損失を被っていると思われます。

一方、全国に店舗展開しているグループ店は分散効果により全体としてはダメージは比較的軽減されると思われます。営業再開後の資金繰りもグループ店舗間で融通が利くのではないでしょうか。また、店舗数が多いので、不採算店舗の見直し等による再建といった措置もとれます。

 

●店舗規模別~ほぼ全店が休業していますので、今回に限っては、さほど関係はないと思われます。ただ、営業再開後の回復力に着目すると、店舗規模が小さくなるにつれ店舗数も少ない傾向にあるとみられるので上記のような数によるメリットは得られにくいと考えられます。

 

パチンコ店の現状は、毎月の利益がそのまま支払い資金になるといった、いわゆる自転車操業の店舗も少なくはないと言われています。

 

これは、業界全体の市場規模が2005年をピークに10数年間縮小傾向にある事により裏付けられます。(2005349千億円→2018207千億円、レジャー白書より)

 

長年の収入低迷により、十分な内部留保はできていないでしょう。自ずと支払い資金のストックは限られると思料されます。

 

それでも家賃などの賃借料、人件費、機械代等固定費の支払いは待ったなしです。

 

こうした環境下においては、1日の休業が大きなダメージにつながりかねないことは想像に難くありません。

 

支払いが慣例的に月単位の契約である以上、1か月を超える収入途絶がそのまま資金ショートを引き起こすといったケースはあると思います。

 

13都道府県のパチンコ店には1割強の人員削減圧力がかかる(産業連関分析ツールを使った推計)

従業者の人員削減圧力については以下のとおりです。推計については文末に関連記事のURLを掲載しましたのでご覧ください。日本の完全失業率が2.5(20203)であることを考慮すると大きな影響だと思います。

 

パチンコ店従業者数は全国で22万人(パチンコ・チェーンストア協会調べ)との情報があります。これを基に各地域のパチ・スロ設置機械台数の全国割合から推計すると、7都府県は81,639人、6道府県41,112人となります。

 

●全国パチンコ店の休業により全国で22千人10.2%の従業者に人員削減圧力がかかります。

7都府県では17百人13.1%、6都府県47百人11.4%です。

 

安定感のある持続的な収益性の追求が再建につながる

パチンコ・パチスロ参加人口は減少傾向に歯止めがかからず、2018年で950万人と直近ピーク時2,170万人の半分以下の水準にまで落ち込んでいます。(数値はレジャー白書より)

 

そこへ今回の全国的長期休業が発生しました。

 

営業再開地域におけるパチンコ店の客入りは、休業前と変わらずか、むしろ減っているとの情報が目立ちます。

 

今回の事態により、パチンコ店では財務面での経営体力と集客力が重要であるとの認識が以前にも増して高まると思われます。これは安全性と収益性の向上を意味し、これらの基盤強化が喫緊の課題となります。しかも持続性のあるものでなければ突発的な危機には対応しづらいでしょう。

 

緊急避難的に融資を受けるにしても審査はあるので安全性と収益性は問われます。

 

こうしたなか、集客のために使える費用は限られているわけで、出玉還元による集客に偏りすぎると一時的な集客を繰り返すだけです。

 

一方、個人的な感じ方ですが、「ストレスなく遊べて多くの顧客からの信頼が厚い店舗」、「地域密着によりアットホームな雰囲気を醸し出しくつろぎやすい店舗」は実際にあるし常連客も多い気がします。

 

ネット上では、こうした基本に立ち返った顧客志向のお店づくりを目指そうとする業界関係者の意見があります。安定した集客態勢が整えば、バランスのとれた出玉還元が期待できるので顧客にとって遊びやすくもなります。

 

休業期間中には、パチンコ店が店舗駐車場の空きスペースを飲食の移動販売業者に提供したり、病院や行政にマスクを寄贈したりといった社会貢献活動がみられました。駐車場でのドライブインシアター開催もありました。

 

こうした地道な努力が実を結び、パチンコが万人から愛される娯楽へとさらに発展することを祈念します。

 

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By okadmin

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