2020年1月10日【更新:2020年6月24日】
本記事の要旨
●1円パチンコは4円パチンコの収益を補ってきたが近年は伸び悩んでいる。
●1円パチンコの長所は、パチンコ店からみると稼働が良い事であり、パチンコユーザーからみると低予算で遊べる事である。
●所得環境が不透明な時代では、パチンコが低予算で遊べる環境の充実は必須であり、そのためにはパチンコ店の高コスト体質からの脱却は課題である。
●パチンコユーザーの求めているものは利益追求ばかりではなく、遊技として楽しみたいといった趣向は少なからずある。
●パチンコユーザーは遊技サービスを享受するために対価を払い、パチンコ店は適正な価格で、ユーザーが満足できるサービスを提供するといった極めて普通の考え方に双方とも立ち返る事ができれば、1円パチンコの未来はそこにある。
4円パチンコの収益を補う1円パチンコだが頭打ち
グラフは1円パチンコと4円パチンコの粗利の割合を示しています。パチンコ店1店舗あたりのパチンコ全体の粗利に占める割合です。
パチンコ機1台が1日に稼ぎ出す粗利に、1円パチンコと4円パチンコの台数の構成割合を掛けて指数化したものです。1円および4円の合計で、2008年を100としてあります。
資料はダイコク電機さまのホームページからお借りしたデータを加工させていただきました。
グラフをみると、4円パチンコの粗利は年々減少しています。
それを補うように1円パチンコはしばらく伸びが続きましたが、2015年から頭打ちです。
1円パチンコの粗利がパチンコ全体の粗利に占める割合は2017年で2割程度にすぎません。
1円パチンコがお店全体の収益を引っ張るには、まだ荷が重いようです。
貸玉レートの構成割合によりパチンコ店ごとに違いはありますが、全国の平均ではこのような傾向のようです。
1円パチンコの長所と短所
1円パチンコの今後の方向性を見出すための特色をおおまかにまとめてみました。
パチンコ店側からの視点
●近年の稼働は低下しているとはいえ、4円パチンコに比べるとまだ良い。
前回の当シリーズ記事にも書きましたが、1円は4円の約1.5倍も稼働が高い。
●4円パチンコに比べ貸玉レートが低いため粗利率も低い。
●粗利率が低いのに機械代や地代、メンテナンス費用等の運営コストは下げにくい。
パチンコユーザーの視点
●4円パチンコに比べ安い貸玉レートで打てる。
●4円パチンコに比べ景品交換時のリターンが少ない。
こうしてみると、1円パチンコの長所は、パチンコ店の視点では稼働が良く集客が見込める事です。
ユーザー視点では安く遊べます。
一方、短所は、パチンコ店視点ではコストの割合が高く粗利が低いということです。
ユーザー視点ではリターンが少ない。
パチンコユーザーとパチンコ店は共に過大な利益を追求し過ぎたのではないか
これまでのパチンコへの接し方について、先の2つの記事と本記事を書いて気づかされたことがあります。
それは、ユーザーも業界も共にパチンコから過大な利益を得ることを追求し過ぎたのではないかということです。それは私自身も含みます。
結果として、パチンコ市場は大規模に膨らみすぎたために環境の変化に対応しきれず、弊害が広がっているように感じます。
一方、1円パチンコが導入された理由がなんであれ、パチンコ店にとってそれは、比較的高い稼働が見込め、ユーザーにとっては低予算で遊べることも事実です。
ただ、パチンコ店がこの形態を維持し続けるためには採算上の問題が立ちはだかると思います。
パチンコ店の経営は他業種に比べ、コストが膨大であるとの指摘があります。コストの見直しはこれまでも行われてきたでしょうが、一段の見直しが迫られている状況でしょう。
こうしたなか、業界では機械代の圧縮につながると思われるECO遊技機の導入に向けての動きも進んでいるようです。
多くの人が遊技するには低予算で遊べる環境が必須
このような状況下、ユーザーの足元の所得環境は改善の動きが鈍く、今後も大きな改善は見込みにくいとみられています。
遊技に使うお金は、家計を犠牲に無理をしてまで捻出するものでは無いと思いますが、無理をしたケースが社会問題化して久しいのも事実です。低予算で遊べる環境を充実させることは必須だと思います。
遊技としてのパチンコへ向けた一段の取り組み
パチンコユーザーは全てが景品を獲得することばかりを目的にパチンコを打っているわけではないでしょう。
パチンコそのものを娯楽として楽しみたいといった思いは、誰しも少なからずあるし多様でもあります。
それは、大音量、大光量の液晶画面に奇をてらった特大ギミックを追加するといった高コストで派手な演出に頼るだけではなく、玉の動きを楽しめるような低コストで落ち着いた方向への回帰へ一段と踏み込むのも一興だと思います。まあ、そういった機種も一部ありますけどね。
パチンコを楽しむ年齢層は、最近打ち始めた若い人から、今にしてみれば地味な昔のパチンコ台から打ち続けている年配まで幅広いのですから。
少しマニアックな客層が増えるかもしれませんが、SNSなどネットで見かける意見をみると、パチンコを辞めていった向きにはそういった趣向を持つ人も少なくなさそうです。
ユーザーの趣向を反映したPRへ~「パチンコ店買い取ってみた」の例
パチンコ店には常に集客といった問題があります。経営を維持していくためにどうやって集客するかは最も力を入れる課題の1つでしょう。
YouTubeに「パチンコ店買い取ってみた」というチャンネルがあります。御存知の方も多いでしょう。
動画の舞台となるチャレンジャー幸手店(埼玉県幸手市)を経営している「ひげ紳士」さんは「(パチンコのコンテンツ等を好きな者同士が集まると)パチンコのギャンブル性とかそういうものを超えた輪が広がり、(ユーザーからの)意見も出てくる」と最初の動画投稿(2015年9月19日投稿)で言っておられます。
経営的には厳しい状況を訴えていますが、それゆえに、コストのかかる最新台の導入を抑えたうえで、ユーザーの意見を踏まえた中古台を厳選し設置し、また、「戦国乙女」等のコンテンツを前面に出した遊技色の強いお店のPRを行っています。
近々、2号店をオープンするとのことです。こちらはパチンコ店ではなくゲームセンターですが、レトロパチンコ台の設置が主体となるマニアックな趣向のお店のようです。
真価が問われるのはこれからでしょうが、既存の枠にとらわれない独自の手法で経営やPRを行うパチンコ店経営者がいて、人気もあるというのは興味深い事実ですし、ユーザー目線を重視している点には着目すべきだと思います
ちなみに、このチャンネルは登録者数が8.72万人(2020年6月24日現在)と人気を集めており、動画を見て来店する県内外からの新規客も毎月いるようです。
現在では、追随するかのように店舗紹介の動画を投稿するパチンコ店が増えています。
パチンコ店の広告宣伝に関する規則がどう関わるかといった事は別にして、ネットへの動画投稿が集客手段のスタンダードの1つとなりつつあるのかもしれません。
1円パチンコの未来は時代にあった適正バランスに向けての取り組みの先にある
パチンコユーザーは遊技サービスを享受するために対価を払い、パチンコ店は適正な価格で、ユーザーが満足できるサービスを提供するといった極めて普通の考え方に双方とも立ち返る事ができれば、良い落しどころがみつかるかもしれません。
なにも、景品の提供を否定しているわけではありません。
要は、趣向の多様化や所得環境の変化の中で、時代に合った適正なバランスに向けての取り組みが必要だと思います。
そこに、1円パチンコの未来が見えるような気がしてなりません。